平成22年2月7日 千葉県富津市関尻で「関尻の綱つり」という
行事が行われました。

富津市(人口48千人)は房総半島の中西部で東京湾側にあり、
南北40kmの海岸線、マザー牧場のある鹿野山や切り立った崖のある鋸山など
海と山に囲まれた自然の豊かな所です。

この地区は海岸から8kmほど内陸にあります。

千葉から舘山道・富津中央ICで降り、一般道10km 通算70km 1時間15分
予め班長さんに聞いていたので迷わずに着きました。

ガソリン税のお陰で道路はどこも立派です。
この集落が関尻で18戸あります。
集落の裏山の麓にお堂がありました。
ここで作業が行われるのだそうです。一寸下見をしておきましょう。
 
今日の作業に使う藁が持ち込まれています。
鴨居に掛かっている賞状を見ると昭和16年4月11日付けの

「堆肥一斉積込週間実施成績優秀・・・の賞状」
そのほか村税完納模範などのものが並べてあります。 
 
これで驚いてはいけません。

中を覗くと仏像が何体か鎮座まします。
古びた掲示を後で解読すると

「内規阪不動堂御遷座
大正12年9月1日 震災の為堂宇亀裂崩落シタルニヨリ根本堂遷座ス
1 御本尊薬師如来・不動明王・阿弥陀如来 御三体・・・以下略
昭和7年9月1日」

とあります。なんと78年前のものでした。
 
午後一時過ぎ皆さんが集まってきました
班長さんの挨拶で・・・・
銘々が持ち場に分かれて作業を始めます。
 
大きなわらじを三っつ作るので3組に分かれて太い縄作り
 
 渾身の力を込めて縒りをかけます。
こちらでは細い縄造りです・・・・何になるのだろう。
太い縄のほうは大分長くなりました。
はみ出した藁を丁寧にはさみで整えます。
 出来上がった縄を大わらじの芯になるように・・・・
配置します。
 
最初のところはベテランが・・・ 
そして藁を組み込んでいくと
大わらじの形になってきました
こちらは何をしているのだろう?
大わらじのほうは鼻緒を作り始めます。
こちらも何か形になって来ました
 杉の葉と木炭があります・・・・何に使うのだろうか
鼻緒も大分出来てきました。
酒樽です。
酒好きの人が作ると大きくなるそうです。
大わらじは出来ました。長さ1.5m 巾60cmあります。
これを集落の入り口に掲げ、厄病神が来た時にこの村には

こんな大きなわらじをはく巨人がいるぞ!と驚かせて
引き揚げさせるというのです。
その時、厄病神を追い返すだけでは後の祟りが怖いので
お酒を飲んでいただき機嫌よく帰ってもらいたい。
なんと優しいことでしょう。

また酒樽を縛る縄に「杉の葉」をつけるのは
「この部落は厄病が過ぎ(杉)ました」

「木炭」を付けるのは
「この部落は厄病は済み(炭)ました」という意味があるのだそうです。
こちらも出来てきました。
酒樽も出来上がりました。
大わらじに酒樽を括り付けて出来上がりです。
あまった藁はすぐに焼いてきれいにします。
少し冷えてきた身体にありがたい暖かさです。
全部出来上がりそれぞれにお酒を飲ませて・・・・・・
三つの班に分かれて出かけます。
軽自動車に乗せられて
ポイントの一つ、関尻と上後の境で待ち受けているとやってきました。
電柱に登って・・・・
出来上がりです。
この三叉路には石のお社もあり、いかにも村境の風情があります。
もう一つは道路沿いの・・・・
木に掛けられていました。
手前には昨年のものが朽ちています
三つ目は国道沿いにありました。
三つの大わらじがセットされ村はこれで安心です。
全てが終り皆さんほっとしているところです。
ご苦労さまでした。

日本中欲しい関尻大わらじ

これで「関尻の綱つり」が終わりました。

この行事はいつ頃から行われていていたかは分からないそうです。
この地区の隣の地区の人に聞くと、昔は各地区でやっていたが

工場が出来、働きに行く人が多くなり、農業する人が少なくなり
やらなくなったと言っていました。

古いことは分かりませんが、調べてみると
1985年には農家(含兼業)3、187軒、2005年には1、362軒と
57%減少しています。


産業別就労者も一次産業は10%、二次27%、三次63%と
すっかり産業構造が変わっています。

昔のように農家の方々がまとまれば、その地域は
殆んどカバーされる時代から変わってしまっています。

この地域だけの問題ではありませんが
伝統行事の維持・継承は大変難しくなってきているようです。

高齢化と不安定化が進む社会でどうやってコミュニティを守るか?
新しいソフトが必要になっていると感じました。

なおボクのページにある「辻切り」的コンテンツは
次の通りです。

市川市 辻切り
多古町 蛇祭り
流山市 大しめ縄行事
佐倉市 井野の辻切り


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