平成22年1月25日 千葉県佐倉市井野において、
古くから伝わる「辻切り」が行われました。
佐倉市は千葉県の北部の北総台地中央部にあり、
千葉から20km、成田から15km、都心から40kmの
位置にあり、印旛沼、佐倉城址それに農村地帯と自然に恵まれた、
人口175千人の街。
またユーカリが丘には高層マンションも増えて
都会と田舎が並存しているところです。
JR幕張本郷で京成幕張本郷へ乗り換え、 津田沼で成田行きの乗りユーカリが丘で下車 千葉から40分 |
駅前はこのようなビルで取り囲まれています。 神事が行われる現場へタクシーで |
すっかり田園風景です。 この地域には1〜5番組があり、それぞれで神事を行います。 私は2・3番組へお邪魔しました。 向こうに見える建物が作業が行われる井野会館です。 |
朝8時すぎ、周辺の方々が集まってきて、 藁打ちから始まりました。 「辻切り」の辻は十字路や道端ですが、道だけでなく空間をも指す語で 「塞神(さえのかみ)」のお札を奉じた蛇を村境や家の入り口に 掛けることにより外から悪疫や邪悪なものが 入るのを防ぐとともに、五穀豊穣をも祈願して 行われてきた行事だそうでです。 |
それぞれが持ち寄った藁を適宜配分して作業を始めます。 |
村の入り口に掛ける大きな蛇(大辻という)を二つと 各戸の入り口に掛ける小さな蛇(小辻)を戸数分だけ作る。 ここの組には19人です。 |
藁を一掴み取り、穂先を先にして手元を縄で縛る。 穂の方を三等分にして 三人が一本ずつ持って、右回りにしっかり捻る、 お互いに手渡して左綯いにします。 普通は右綯いですが神事なので 左綯いにするのだそうです。 |
小さい蛇は女性の担当です。 手も動きますが口も滑らかです。 |
胴の中央にかけて太くしていくので、かなり力がいります。 |
草履のような形のものを二枚作り二つをあわせると蛇の頭になるのです。 頭を作るのは大変難しく古老格の人が作ります。 |
蛇の口には唐辛子を爪楊枝に差して、喉に固定する。 |
出来た蛇は散髪をしておめかしです。 胴体には七本の足と称して藁を少しはみ出させる。 大きい蛇は長さが5メートルくらいあります。 |
小さい蛇も口には唐辛子の舌、あとは胴体にシキミ、柊、グミなどを差し込む。 柊とグミは鋭い棘、シキミとグミは強い臭いで魔よけになると 考えられているのです。 |
これが「塞神(さえのかみ)」のお守りです。 |
出来た小辻は踏まれないように吊るして部屋の隅に掛けておきます。 小さい蛇の長さは3メートルくらいです。 |
大辻もシキビ、柊、グミを差込みます。 これらは「こけら」とも「うろこ」とも言われています。 |
蛇の目は「五穀」で作ります。 大豆・粟・黍・米・麦の五穀は予め焙烙で煎ってあり、 悪い芽がでないようにという意味があるのです。 適量を半紙に取り・・・・・ |
丸めて縛り・・・・ |
墨で目を書いて蛇の頭に付ける。 小さい蛇も同様です。 |
出来上がったら上座に祭り・・・ |
拝礼の後・・・・ |
酒を飲ませる |
それでいよいよ「辻切り」です。 |
一つ目の場所は会館のすぐ裏にありました。 昨年の蛇がまだぶら下がっています。 |
今年のは路を挟んだ反対側に・・・・ |
梯子を掛けて・・・・・ |
木に巻きつけて・・・・・ |
かくのごとし |
二つ目は少し離れた場所、森の端 |
昨年のものを下ろして、新しい蛇を巻きつける・・・・・ |
縛り付けて・・・・ |
完成です。 |
帰り道に見ると他の集落が付けた蛇がありました。 |
それぞれの境界線に監視カメラをつけてたようなものですね。 |
すぐ側にこのようなプラカードがありました。 昔と同じですね・・・・・ |
小さな蛇は各戸の入り口に飾られています。 植木の枝に・・・・ |
庭の入り口・・・・・・ |
門扉に・・・・・ |
全てが終り、モノレールの駅まで歩いてみました。 遠くに見えるのがユーカリが丘のマンションです。 |
モノレールのユーカリが丘駅です。 このような素晴らしい都会です。 |
昔から監視カメラは放せない
この行事についてのの起源は文献等の記録が皆無で起源は
分からないようですが、口伝によると江戸時代末期までは
さかのぼることは出来るようです。
しかし現今の日本の物騒な社会情勢からは
この行事を昔の事として懐古的にみることは出来ません。
技術の進歩で悪も悪質になっており
インフルエンザも毎年新型が出てきています。
文明が進んでも災害や病気、事件事故は絶えない、
むしろ増えている。
神に祈りたくなる気持ちは昔も今も変わりません。
なおこのページを作るにあたり
佐倉市史研究(昭和60年3月20日 第3号)佐倉市史編纂委員会
佐倉市史研究(平成11年3月 第12号)佐倉市
佐倉市史 民俗編(昭和62年3月25日)佐倉市史編纂委員会
風媒花(No.15 2002)佐倉市教育委員会
を参考にさせていただきました。
有難うございました。
(追伸)
私のホームページで佐倉市に関するものは
平成21年10月の「佐倉の秋祭り」が
あります。